臨済宗の葬儀は宗派が分かれており、地域によっても差が出ます。基本的には同じ禅宗の一派である曹洞宗のやり方と同じことが多いです。焼香の仕方も実に様々なものがあるので確認しておきましょう。
厳しい武士の世に広まる
臨済宗は、栄西を開祖とした禅宗の一派です。看話禅と呼ばれる禅を最も重視し、師匠と弟子が坐禅によって対話するような形で修行が行われます。具体的には、師匠がまず公案と呼ばれる禅問答を出し、弟子はこれに対して頭だけで考えるのではなく、体全体で感覚を研ぎ澄ませて答えを見つけることをします。単なる理論で収まるのではなく、本当の真実を探して体得します。そうして弟子が出した答えを、また師匠が確かめる意味で参禅をします。これが看話禅の流れです。師匠と弟子のみで、対面する形で行われます。臨済宗の教えは自力によるものです。念仏を唱えることで極楽浄土に行こうとするのではなく、自分の力で坐禅をし、悟りを得て答えを出します。臨済宗の教えは師弟の間で受け継がれ、主に厳しい世の武士の間で広まったとされています。臨済宗は、曹洞宗と似た形式で葬儀が行わることが多いですが、実は決まった式次第はありません。臨済宗には14もの宗派があるため、それぞれで異なるのです。戒名には新帰元、その下には霊位と書かれます。
鼓ばつ三通の葬儀
臨済宗の葬儀は、授戒、念誦、引導という部分に分かれています。授戒で故人が仏の弟子になる証を授かり、念誦で故人に荼毘を告げ、引導で故人が仏の世界に送り出されます。禅宗の葬儀には2種類あり、徳を積んでより深い境地を制した尊宿の葬儀と、修行中の身であり、その最中に亡くなった亡僧の葬儀があります。一般の在家信者は亡僧の葬儀を行うことになります。これは同じ禅宗の一派である曹洞宗も同様です。細かい部分については同じ曹洞宗でも異なり、また曹洞宗のやり方とも微妙に異なります。臨済宗の枕経には枕経諷経が読まれます。諷経には声を揃えて経文を読むという意味があります。枕経、通夜の両方では和讃が読まれます。葬儀では、入堂の後の剃髪から始まり、懺悔文で故人の罪を消し去ってから三帰戒文、十重禁戒などを経て血脈授与を行います。その後は入龕諷経、龕前念誦、起龕諷経、山頭念誦が行われ、その後引導法語となります。入龕諷経から起龕諷経までは一様に大悲呪と回向文が唱えられ、山頭念誦では往生咒を唱えるとともに太鼓が叩かれます。太鼓で音を鳴らす儀式は鼓ばつ三通といい、葬儀中に2回と出棺の際に1回行われます。
臨済宗の焼香
臨済宗の焼香は、香炉の前で一礼し、お香を右手親指、中指、人差し指の3本で持って行いますが、通常のように額の高さまで押し頂くことはしません。回数は1回の場合が多いですが、場合によっては3回のこともあります。2回行うこともあり、その場合は1回目を主香、2回目を添え香といいます。やり方も少々異なり、1回目は通常のやり方で額に押し頂き、2回目は少量のお香を持って額には押し頂かずに香炉にくべます。